uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

チヨ子 / 宮部みゆき

チヨ子 (光文社文庫)

チヨ子 (光文社文庫)

雪娘

久しぶりに集まろうということになった、小学校時代の仲良し四人組。だが本当は、そのグループは五人いるはずだった。もうひとりのユキコは、二十年前の雪の降る日に絞殺され、犯人はいまだに不明である。

オモチャ

玩具店の窓に首吊りの輪が見えるという噂があった。その店のおじいさんはクミコの大叔父にあたるが、若いころ家を飛び出してから義絶状態ということで、先方から遠慮して、今でもつきあいはない。おじいさんは玩具店の家付き娘の婿になっていたのだが、最近おばあさんが亡くなってから、その噂がたつようになった。

チヨ子

スーパーの倉庫に保管されっぱなしだったウサギの着ぐるみ。これをかぶると、人の姿がぬいぐるみだったりロボットだったりスーパーヒーローに見える。その人が子供のころ大切にしていたものに見えるようだ。

いしまくら

殺された女子高生の幽霊が公園に出るという噂がたっていた。ノーパン幽霊というから穏やかではない。見物しようとする中高生が押し寄せてカツ上げ事件などが発生し、ちょっとした騒ぎになっている。その騒ぎに石崎が首を突っ込むことになったのは、娘にできたボーイフレンドのおかげだ。その幽霊女子高生は、娘の彼氏が子供のころ慕っていた、近所のお姉さんだった。手のつけられない不良だったとか、援交していたとか、シャブ中だったとかいう評判になっているのが許せず、娘とふたりで噂を調査しているという。

聖痕

子供に関する調査を専門に扱う女調査員に、料理屋を営む男から依頼が入った。彼と、別れた妻とのあいだにできた子供は、数年前に凶悪事件を引き起こした犯人「少年A」であった。
元妻には離婚の原因となった情夫がいて、離婚後は二人で慢性的な虐待を行っており、少年が成長すると保険金をかけて殺害しようと計画した。追い詰められた少年は、寝ている母親と情夫の首をナイフで切り落とすと、翌朝なにくわぬ顔で登校し、担任教師を人質として学校に立て篭もった。事件は世間で大きく騒がれたが、結局虐待の事実等が認められ、少年は適切な医療を受けて、すでに保護司のもとで社会復帰している。
ところが最近、少年を偶像視するカルト集団がネット上にあらわれたという。「黒き子羊」を名のる彼らは、虐待から子供たちを救う「黒き救世主」として少年を位置づけていた。

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異形コレクションなどに発表されたホラー系短編の自選集。

長編作家のイメージが強い宮部だが、短編も悪くはない。テーマをコンパクトにまとめて、すとんとオチをつけるのが短編の作法だろうが、それなりにまとまっている。世間に潜むなにげない悪意を描く作品群は、現代物推理長編や時代物と読み味はそう変わらない。そういえば時代物では連作短編が多かった。お手の物だ。

とはいえ寄せ集め感は否めず、その点については「光文社(笑)」という感想だ。まあ単行本未収録短編が世に出るのは悪いことではない。いきなり文庫なのは良心的だ。これが○○社ならハードカバーだ。

著者インタビューを交えた大森望の解説は必見。宮部の着ぐるみ姿が拝めます。ある種のマニアの方にお勧め 笑
いや別にくさしてないっス。かわいらしいおばちゃんだと思っております。