uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

アラビアンナイトの殺人 / J.D.カー

アラビアンナイトの殺人 (創元推理文庫 118-6)

アラビアンナイトの殺人 (創元推理文庫 118-6)

富豪ジェフリー・ウェイド氏が開設しているアラビア博物館で、奇妙な事件が立て続けにおこった。ひとつめは、博物館前の道路を巡邏中だった警官が、つけひげをつけた狂人のような男に襲われたこと。高い塀の上から現れた男は、一瞬のうちに、まるで掻き消えたかのように現場から姿を消した。二件目は、同じく博物館の前で、グレゴリー・マナリングが別の警官に暴行をふるい逮捕されたこと。マナリングは、ウェイド氏の娘ミリアムの婚約者で、今夜開催される予定の会合に出席するため博物館を訪ねるところだったという。
第一の警官による人間消失の証言が気になったジョン・カラザード警部は、博物館に向かい現場を捜索してみると、石炭置き場につながる鉄のふたが路上にあるのを見つける。石炭置き場は博物館内部につながっており、さらにその先で、展示品の馬車に押し込められた、つけひげをつけた男の他殺死体が発見された。しかしその男は、警官を襲ったつけひげの狂人とは別人だったのである。
その日博物館では、傲慢な性格のマナリングを懲らしめようと、ひと芝居うって驚かせる計画が進行中だった。メンバーはウェイド氏の息子ジェリーを筆頭に、彼の友人サム・バクスターとリチャード・バトラー、ウェイド氏の助手ロナルド・ホームズ、ミリアムの友人ハリエット・カークトン、博物館の夜番プルーン。殺人の容疑者は、グループ内の人物に絞られた。

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千一夜を題材にして、形式を模写して展開する作品。ジョン・カラザード警部、ディヴィッド・ハドリー警視、ハーバード・アームストロング副総監の三人がそれぞれ自分の話を語る。千一夜で言うと「第○の警察官の話」のパターンになる。それぞれの話の中で、事件構造が少しずつ明らかになるが、真犯人だけがわからない。すべての話が終わったあと、アームチェアディテクティブであるフェル博士が犯人を指摘すると、ちょうど夜が明ける。そんなお話。

三人の語り手が同じ事件を違う視点で語り、新たな材料が提供されることで謎がひとつずつ明らかになっていく。3つの話を有機的に絡ませなければならないので、手法としてはかなり技巧的。だが、やはり冗長に感じる。スピード感がなく、事件が遅々として進まない。同じ話を何回も聞かされるんだもの、そりゃつまらんよ。

カー的な不可能犯罪ミステリというよりは、技巧を楽しむ作品なんだろうとは思うが、やっぱりこれはかったるいな。