uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

新宿鮫X 絆回廊 / 大沢在昌

絆回廊 新宿鮫?

絆回廊 新宿鮫?

若くして地位を確立した中国マフィアのボス、陸永昌。定期的に届く日本からの手紙を読んだ彼は、パイプのある情報期間に電話をかけ、樫原茂という男の行方を探してほしいと頼む。

鮫島は売人の露崎から情報提供を受けた。刑務所から出所したばかりの白髪の大男が、拳銃を欲しがっているという。手に入れた拳銃で、ある警察官を殺すつもりだというのだ。須藤会の名前を出したことから、すっカタギではないことがわかる。須藤会はすでに潰れているが、もと組員の松沢という男が、今は栄勇会に在籍し、吉田と名を変えて若頭補佐の地位にある。姓が変わったのは、中国残留孤児二世の妻と結婚し、養子になったためだ。吉田が外様としては異例と言える出世をしているのは、それまで中国人とのつながりがなかった栄勇会において、ビジネスのつなぎ役を果たしているためと思われた。
ところが調査中、話を聞いていた須藤会の組長が残虐な手口で殺害され、さらに鮫島も数人のグループから襲撃を受ける。やり口の荒っぽさから日本人ではないと思われ、暴対の署員から聞き出したところでは「金石(ジンシ)」という中国残留孤児二世のプロ集団の仕事と思われた。しかし「金石」に関する情報は、すべて『東亜通商研究会』に押さえられている。表向きは民間会社だが、内調の調査機関であり、警察を辞職した香田が所属している機関だ。

一方、「フーズ・ハニイ」には薬物捜査の手が伸びていた。ベーシストに覚醒剤使用の疑いがあり、バンド全体にガサを入れ、人気バンドの摘発によって抑止効果を上げようという所轄署の思惑である。もちろん晶は無実であるが、捜査を受けたという事実だけで、現役警官との交際には大きな障害となる。そうなれば鮫島は、辞職するか、晶と別れるかのいずれかを選択しなければならないのだ。

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ほぼ日刊イトイ新聞で連載されていた新宿鮫最新作。ある程度たまったら読もうと思っていたら、折り返し点で一度全クリアされてしまったので断念。出版されてから読むことになった。

今回は重大な変化が二つある。一つは既定路線だが、もうひとつはかなりインパクトの大きな変化だ。実はネタバレを先に目にしちゃっていたので衝撃は少なかったが、知らずに読んでいたら驚くと思う。
というかミステリ板でネタバレを書き込む奴には、納豆の薄いシートに毎回豆が四粒くっつく呪いをかけてやる。スーツを下ろしたときにベンツの仕付け糸を取り忘れる呪いと、出張の日に限って目覚ましがかけっぱなしになる呪いもだ。どうだ、地味に嫌だろう。

鉄板のシリーズなので、それ以上の内容は特に触れない。いつも通りにおもしろい。
新宿に集まる人々のさまざまな「絆」を描いた作品である。タイトルに採用されたこの文字が、連載終了間際に発生した東日本大震災と、そこからの復興を象徴するワードとして出版年の「今年の漢字」に選ばれたのは、偶然にすぎる。