uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

華麗なる醜聞 / 佐野洋

フランスのタブロイド紙に乗った社交界の記事。駐日P国大使ニーデルン氏が、ハイ・ホステスにからむスキャンダルのため更迭されたという。ハイ・ホステスという単語に何かひっかかるものを感じた中央日報社の論説委員稗田は、同僚の松永らと、独自にこの報道の裏をとりはじめる。
やがてハイ・ホステスとはニーデルン氏が入院していた大宮壮年病クリニックの高級付添婦だということがわかったが、事態は思わぬ方向への広がりを見せはじめる。聞き込みを行ったP国大使館に勤める女性や、クリニックの看護婦が、爆弾事件に巻き込まれたのだ。女優や歌手などに爆発物を送りつけて社会問題となっていた、連続爆弾魔「是政小僧」の犯行と思われた。

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第18回推理小説協会賞受賞作。

実際の事件を下敷きにしたもの。是政小僧は草加次郎。P国大使スキャンダルは解説に「日本版キーラー嬢事件」とある。プロヒューモ事件は調べてわかったが、日本であった同様の事件は不明。歴史に埋もれたということは、それこそスキャンダル程度の事件なのだろう。

構造としては新聞記者が事件の謎を解いていくサスペンスだが、いまいち乗り切れずに終わってしまった。世代的にまったく知らない事件がモデルで、どうにも興味がわかない。時代背景の古さ、扱う材料の下世話さも感じ、時事ネタを扱うむずかしさが顕れているように思う。

社会派推理にはどうしてもこういう問題がつきまとう。本格なら古臭さがかえって味となったりするものだが。