- 作者: サミュエル・R・ディレイニー,大久保譲
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2011/06/22
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もう十歳は上のはずなのに十七八歳に見え、拳は醜くゴツゴツとし、片足が裸足の、記憶をなくした男。災厄によって混乱に陥った街ベローナを訪れた彼は、脱出しようとしている女たちから武器「蘭」を受け取り、街へ入った。
ホログラムのシールドをまとった自警団ともごろつきともとれる集団スコーピオンズがうろつき、日付や曜日がめちゃくちゃの新聞ベローナ・タイムスが発行され、白人少女をレイプした黒人男ジョージ・ハリスンが偶像視されている街。そこでは時間や空間がゆがみ、夜空には二つの月が浮かんだり、太陽が空の半分を覆い尽くしたりする。
キッドと名づけられた彼は街の住民たちと交流し、拾ったノートに詩を書きはじめて詩人となり、スコーピオンズのリーダーとして狩りを行う。
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うはあ、なんじゃこりゃ。
めちゃくちゃだ。ストーリーなんてほぼない。全編精神病者の妄想と言ってもいいかもしれない。終盤にかけてはうっすらとメタ文学としての構造が見えてくるが、たぶんそこはキモじゃない。70年代アメリカ文化を先鋭的な実験手法を使って描くのが主題だと思われ。フリーセックス、ホモセクシャル、詩、音楽、人種差別等々。黒人ゲイ作家ディレイニーの面目躍如だ。
読みにくさはこの上ない。思わせぶりではあるが筋の通らないエピソードがぶつぎりで、キッドの思考は思弁的観念的である。はじめから筋が通っていないことへ思弁を連ねても迷宮に入るだけ。あげくのはてにセックスシーンが延々続いたりする。これはかなりの体力が必要…思わせぶり部分について色々と考察したりする向きもあるようだが、そのあたりは頭のよい人にまかせたい。自分はお手上げしておく。わからん!(胸を張って)
おそらく原語では、かなりの言葉遊びが使われているのだろう。最終章なんかは訳者の苦労がしのばれる。こんな作風どこかで見た…ああ、そうだ。町田康だ。町田康を訳したらたぶんこんな感じ。
ここのところ土日しか読書時間とれないので、これを二週間で読みきるのはつらかった…まる一日読書なんてしたの久しぶりだ。まあこれも読書リハビリの一環、ということで。