- 作者: マイクルスワンウィック,Michael Swanwick,小川隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/04
- メディア: 文庫
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ギヌンガガップ
蜘蛛型異性人が提供する、ブラックホールを利用した星間移動テクノロジー。ゲートをくぐった有機物は、ブラックホールの向こう側へ転送され、分子レベルで再構成される。硫黄を主構成物とする異性人はゲートを通れないため、炭素で成り立っている人類側を代表し、アビゲイルが蜘蛛の世界へと試験転送されることになった。
クロウ
さらった貴族の女とともに、時空を超えて追っ手から逃げるトラックドライバー。
犬はワンワンと言った
肉体的改造を施した直立した犬サープラスに、ダージャーが悪だくみを持ちかける。古いモデムを使って、バッキンガム大迷宮に住む女王、百歳にして増殖を続けるグローリアーナをペテンにかけようというのだ。
グリュフォンの卵
月面のトラッカー、ギュンターは仲間たちと月面生活を謳歌していた。しかし突然地球で全面戦争が勃発。その余波は月面にまで及び、ほとんどの住民は狂気を誘発するガスにより狂ってしまった。正気を保った人員は戦時体制を構築し事態の収拾をはかるが…
世界の縁にて
熱核戦争の危機が迫る中、〈世界の縁〉を探検にでかける、二人の少年と一人の少女。そこははるか昔、神秘主義者たちが階段を設置し移住した底知れぬ断崖で、魔術的なパワースポットだった。
スロー・ライフ
土星の衛星タイタンで探査作業を行っていたリジイ。だが事故が発生し、永遠にタイタンの大気中をさまよいつづける運命に陥る。酸素残量が尽きたとき、彼女は死を迎えるのだ。そんな彼女に、知的生命体の意識が語りかけてくる。
ウォールデン・スリー
革命家モードが訪れたスペースコロニー。そこにはウォールデン人が暮らしている。脳の快楽中枢と腹部に仕込んだ共鳴装置をリンクさせ、他人の幸せを自分のものとして感じ、同調することを無上のものとする人々だ。
まずモードを迎えたのは、シルフという仮想生命少女。シルフを作ったのは、かつて彼女が生きていたとき恋人だったコメディアン、コーコランである。
死者の声
木星の衛星イオで硫黄嵐に巻き込まれたマーサは、バートンの遺体をひきずりながら拠点を目指す。彼女の思考には、ときおり幻聴のように語りかけてくるものがあった。
時の軍勢
日がな一日、物置を見張るという仕事をしていたエリー。雇い主のターブレッコ氏からはきつい脅しを受けていたが、ある日好奇心に勝てず物置の中を見てしまう。そこには数世紀後の世界が広がっており、アフターマンと人類との時間戦争が展開されていた。
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『ギヌンガガップ』
ほんとうは恐ろしい「どこでもドア」命題。
分子構造がまったく同じ、再構成された人間は、はたして本人と言えるのか。もとの人間は消滅するのだとすれば、それは死と定義できるのか。
『クロウ』
ネイティブアメリカンの神話が元ネタらしい。幻想的な話。
『犬はワンワンと言った』
人種(?)が混交する世界を舞台にしたコメディタッチの作品。サイバーパンク的。
『グリュフォンの卵』
「グリュフォンの卵」とは月のこと。月に暮らす人々の生活と、終末戦争にかかわる狂想曲。
『世界の縁にて』
ちょっと大人のスタンドバイミー。思春期の承認欲求を描いていてうっとうしい。
『スロー・ライフ』
分類的にはファーストコンタクトネタか。異世界を描く描写に力点が置かれている。
『ウォールデン・スリー』
ディストピアもの。アイロニーも含んでる?狂言回しである革命家の目を通し、同調圧力に果敢に立ち向かうコメディアンの姿を描く。その姿は革命家のものだ。
『ティラノサウルスのスケルツォ』
タイムパラドックスネタ。何者か上位の存在からオーバーテクノロジーの提供を受ける設定は『ギヌンガガップ』と同様。
『死者の声』
『スロー・ライフ』とほぼ同じ話だが、オチが異なる。
『時の軍勢』
これがいちばんおもしろかった。オチはある意味セカイ系ですな。
どれも目新しくないけど、クオリティは高い中短編集。だが突き抜けた作品がないので物足りない感はある。いくつかの共通するテーマ性を再生産していく作家のようだ。
グラッグの卵と混同したのは内緒だ 笑