2112 須走登山口
ちょうど五合目登山口のすぐ下で雨雲の上に出た。さらに高い位置にもう一段雲があるが、見上げる山稜は全体がうっすら見えている。これは山頂からの雲海が期待できるかも…なんて思ってたら甘かった。甘すぎた。
風が湿気を含んでいて、独立峰の富士山体にぶちあたり、頂上付近にだけ雲がかかる典型的な「笠雲」が発生したのだ。八合目から上は大粒の雨、台風なみの強風、5メートル以下の視界。体感気温は氷点下。自分の経験上、もっとも過酷な登山となった。
そんな条件下でも、いろんな登山者がいる。ハーフパンツとビニールカッパで八合目まで登ってきた外人。普段着にビニールカッパの集団を従えて予約もしていない山小屋が開いているか聞いて回っている、普通の運動靴をはいた引率者。特にビニールカッパ率と運動靴率、素手または軍手率は異常。そんなん凍死してもおかしくない。完全防水装備でフリース等々重ね着してても震えが来ているというのに。こんなのが大挙して押し寄せてるとしたら、そりゃ批判もされる。
2205 新六合目長田山荘
50分。10分休憩。
わりと長い森歩きから森林限界を越えると新六合目。ここまでは順調。湿気が多いので汗だくだ。汗で濡れたままだと高高度で体が冷えるので、入念にタオルでぬぐう。
2238 本六合目瀬戸館
休憩込み1時間25分、休憩なし1時間15分。
まだ気候に問題はない。が、徐々に気温が下がりつつある。あまり汗をかかなくなってきた。まだ体力はほとんど使っていないので休憩なしでそのまま登りつづける。
0007 本七合目見晴館
休憩込み2時間55分、休憩なし2時間25分。15分休憩。
行動食を補給。食べているうちに雨がふってくる。レインウェアと防水グローブを装着し、ここですでにフル装備。先が思いやられる。状況によっては撤退も視野に入れ始めた。
0045 八合目下江戸屋
休憩込み3時間30分、休憩なし2時間20分。35分休憩。
七合目から八合目の間で濃いガスの中に入った。視界5メートルほどだと思われるが、それは明るいときの話。夜間ではヘッドランプがガスに乱反射して、実際の視界はそれ以下になる。2メートル先が見えない。しかも自分メガネなので、レンズに水滴がついてさらに状況は悪くなる。ガイドロープがある場所はそれを頼りに登れるが、ときどきまったく道が見えない場所がある。
ここで休憩が長めなのは、すぐ先のルートがまったく判別できなかったからだ。見えない道を適当に進んだりなんて絶対にできない。どうしてもわからなかったらここで止まるしかない。
で、どうするかというと、誰かが先行するのを待って様子を見てから進もうというわけ。でも考えることは皆同じで、誰も進もうとしないのねw ここで特攻したのが上記の普段着ビニールカッパの集団ですよ。恐れを知らないってこわいねえ…道が違っていたときスタート地点に戻れる保証なんてないのに…でも結果的にルートは見つけたみたい。ちゃっかりトレースし、突破に成功。
0129 本八合目富士山ホテル
休憩込み4時間20分、休憩なし2時間55分。30分休憩。
ここで、山頂アタックするか下山するか真剣に検討。しばらく天候を観察してみたが好転する気配などまったくない。登っても意味がない。しかし下山するにはある程度明るくなるまで待たなければいけない。登るより下る方がはるかに危険だ。
行動を止めてじっとしていると体が冷えるので、上まで登ることに決める。体を暖めていないとかえってよくないと判断。
0219 八合五尺御来光館
休憩込み5時間10分、休憩なし3時間15分。15分休憩。
最後の山小屋。ここから先は岩場を含む険しい道。休憩をとって英気をやしなう。体力的にはほぼ問題ない。悪天候のためゆっくり休憩をとりながら登ってきたのが逆によかったようだ。高山病の心配はないことも去年わかっている。心拍数が上がりすぎない範囲で呼吸を整えながら登っていけば着くだろう。山頂のない山はない。山頂に着けば下りるだけだ。
0341 山頂
休憩込み6時間30分、休憩なし4時間20分。15分休憩。
吉田・須走ルート山頂に到着。人少なっ!世界遺産登録以来、連日大量の人が押し寄せてるんじゃなかったっけ?この天候じゃ小屋泊の人は出てこなかっただろうし、下界は雨だし、こんなもんか。ここにある雲は下界に降らせている雨雲ではないけどね。
これ以上とどまっていても意味はないし、御鉢巡りに出るような状況でもない。休憩したのちにとっとと下山する。しばらくすると明るくなってくるはずだ。
つづく。