uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

幽女の如き怨むもの / 三津田信三

幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

幽女の如き怨むもの (ミステリー・リーグ)

戦前は〈金瓶梅楼〉、戦中は〈梅遊記楼〉という名の遊廓、戦後になっては〈梅園楼〉というカフェー。桃苑の遊廓町にて、名前も営業形態も変えながら続いてきた店。そこには『幽女』という得体の知れないものが棲んでいるという噂があった。
それは『緋桜』という源氏名の遊女が在籍するときに姿をあらわす。初代緋桜。その五年後に二代目緋桜。さらに十一年後の三代目緋桜。いずれのときも、必ず謎に満ちた飛び降り事件が、三度連続して発生するのである。
三つの時代、三度名を買えた店、三代の緋桜、三度の飛び降り。はたしてこれは、本当に『幽女』の怨みによって起こされた事件なのか。それとも…

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刀城言耶シリーズの現時点最新作。

いやーよくできてますな。ミステリというよりは、読み物として。四部構成になっていて、第一部は初代緋桜の日記。〈梅遊記楼〉女将へのインタビューが第二部。第三部は事件を解決しようとする駆け出しミステリ作家の手記で、最後に刀城言耶による解決編がくる。

特に初代緋桜日記の出来がよい。戦前遊廓、そこで働く女性たちが、まだ花魁と言われていた時代。前借金という名目で「売られてきた」少女が、何も知らぬころはきらびやかな存在として認識していた花魁の真実を知り、絶望し、そして救われるストーリー。そこに『幽女』の怪談をからめている。
描かれている風俗などはどこまでが真実なのか判然としないのだが、内容は非常に興味深く、おもしろいものだった。

謎解きはひどくあっさりしている。ひとネタ大きなミスディレクションがあるのだが、その他の部分では掘り下げずに突き放している部分も多い。理屈では解決できないことを必ず残すのがこのシリーズの特徴だが、それをうまく利用して、あえてぼんやり落としたように思える。下手にいじりまわすと、せっかくの初代緋桜日記が台無しになりかねない。

まあでも、次回はいつもの刀城言耶、名探偵みんな集めてさてと言い、を期待したいところではある。