- 作者: アーサーマッケン,Arthur Machen,平井呈一
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1970/06
- メディア: 文庫
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怪奇クラブ
ロンドン街外れの廃屋に集まる不審な三人の男女。彼らが姿を消した直後、その屋敷に現れたダイスンとフィリップス。
後からやってきた二人は、いくつもの不思議な体験をした結果、ここへたどり着いた。
・希少な金貨を捨てて逃げる男とナイフを持って追う男
・アメリカで盗賊団と間違われた男
・兄が死者と失踪したと訴える女
・「矮人」の存在を追い研究を続ける医者
・宝石を安く巻き上げようとする古物商
・拷問具「鉄の乙女」
・体が溶ける謎の薬
等々…
大いなる来復
既知の地名に関する奇怪な新聞記事に目をとめた男。
さらに友人から、ラントリサントで宗教儀式が行われているとの情報を得た男は、現地で何が起こっているのか確かめにゆく。
ラントリサント。──かき入れどきの夏はすこぶる好調。海上の気温、昨日正午六十五度。最近の来復中にいちじるしき出来事おこりたりとおぼし。このところ光は認められず。満杯楼。釣魚亭。
─────
ラブクラフトらに多大な影響を与えたことから、クトゥルー神話の祖ともいえるホラーの巨匠、アーサー・マッケン。書店で復刻版を見かけて衝動買い。初読。
『怪奇クラブ』
謎めいたプロローグから始まって、短い挿話が続いたあとにエピローグで最初につながる構造。ダイスン、フィリップスという高等遊民が興味本位に収集したストーリーが、やがてある事件につながっていく。個々のストーリーはサスペンスであったり怪奇嘆であったり、さまざまなバリエーションがある。登場人物が重複していることはプロローグからして想像つくので、詐欺的な話かと思っていたが、そんな安っぽいオチではなかった。円環を描いて全体象が浮き上がると、これまでの挿話の意味もはっきりと見えてくる。
『大いなる来復』
分類するなら探偵劇だろう。新聞記事をきっかけに、ラントリサントで起きていることの真相を調査する「わたし」。
調査を行う過程での思考が読みどころ。さまざまな事例をひいて思考実験を行い、結論を導き出している。だが本件に関しては…
もはや古典ということで、目新しさや驚愕といったものはないが、何より20世紀初頭ロンドンの雰囲気がよい。この読み味に浸る時間は、快感と言える。古典を読む良さって、そういう部分あるよね。古き良き異世界へのトリップ。楽しい旅だった。