uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

完璧な夏の日(上)(下) / ラヴィ・ティドハー

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈上〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

完璧な夏の日〈下〉 (創元SF文庫)

第二次世界大戦直前、量子力学の実験装置が暴走して発生した「フォーマフト波動」は、各国に数名から十数名の超能力を持つ超人<ユーバーメンシュ>を生み出した。
英高齢退役軍人局に所属するフォッグは霧をあやつる能力を持つ。霧をまとって姿を消し、時には人型に形どった霧の内部水蒸気を一瞬に固化させて物理攻撃も可能。フォッグの相棒は、右手であらゆる物質を消滅させることのできるオブリヴィオン。スパイとしてドイツなど関係各国に派遣させられたフォッグは、ドイツ占領下のパリで「ゾマーターク(summertag、夏日)」と名付けたフォーマフト博士の娘と出会う。

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こりゃあおもしろい。「全部入り」とでも言いましょうか。
まず超能力バトルがおもしろい。要はスタンドバトルである。オブリヴィオンの能力なんて、もろガオンだもんね。フォッグの能力は支援向きで、諜報活動を行う英国のメンバーとしては理想的。ドイツの能力者とのバトルはわりと緊張感がある。
ドイツや英国はユーバーメンシュを諜報部隊として活用しているのだが、米国は対照的に、派手な戦闘をショー化して宣伝公報に使っている。このあたりはアメコミヒーローのパロディだ。そしていかにも米国的な、勧善懲悪の世界に落とし込もうとする雑な精神性を揶揄しているようにも見える。
原題は「THE VIOLENT CENTURY」。暴虐の世紀、だ。そのとおりバイオレンスも大いに盛り込まれていて、二次大戦から現代の宗教戦争まで、実在の人物を配してグロテスクに描いてもいる。
極めつけは、この作品のテーマ。「純愛」だ。ここまでいろいろ詰め込んどいて、テーマが純愛てw しかもさー、いや、わかっちゃいたけど、まあ、そうだろうなあw
いやあしかし読んでて飽きなかった。盛り込まれてる内容の多さから見れば、話がとっ散らかってもおかしくはないのだが、現代のフォッグが過去を回想するという形式もあってか、まったく気にならなかった。