uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

怪 vol.0035

文明怪化奇談 / 荒俣宏

第三回 カーマンセラ嬢
第五回内国勧業博覧会「不思議館」の演目は、パリー万博「電気光学宮」で好評を博した、舞踏家ロイ・フラー考案のダンス。踊るのはロイ・フラーに私淑したアメリカ人女優、カーマンセラ嬢である。千秋楽の興行では、さらにもうひとつ仕掛けをほどこし、エックス線による人体透視を組み合わせた実験的舞台を披露することになっている。
だが、エックス線が人体に与える影響に関しては、まだ不明な点が多い。つい先日も、透視マジックを行っていたジャスティンが手をケロイド状にやけどしたばかりである。カーマンセラ嬢と恋仲でもあるジャスティンは、今回の興行に強く反対していた。
その日、見物にやってきたのは、島津製作所の二代目経営者島津源蔵。そして、鹿島清兵衛。浪費癖のため酒問屋を放逐された趣味人で、写真家だ。

虚実妖怪百物語 / 京極夏彦

第四回
黒史郎が幽編集部に入って行くと、怪談作家たちが相談している。ここ最近、怪談の採話ができないという。以前に怪異の取材をした人であっても、再取材や掲載確認を行うと、そんなことはなかった、すべて理屈のつくことだった、と否定するのだ。それが、どんなに無理な解釈であっても。
怪編集部では、ある古書店でみつかった妖怪絵巻の鑑定をするため、民俗学者小松和彦を紹介することになっていた。バタバタして先延ばしになっていたのだが、榎木津平太郎が案内役を仰せつかり、小松とともに古書店を訪ねる。ところが妖怪絵巻からは、文字だけを残し、妖怪の絵だけがきれいに消えていた。

過ぎ去りし王国の城 / 宮部みゆき

第一回
まったくめだたない、どちらかといえばボッチの中学三年生、尾垣真。通常なら高校受験の追い込み時期だが、これまためだたない高校への推薦入学が決まってしまい、家業のカレーショップを手伝ったりしながらボンクラな日常を過ごしている。
ある日、ひょんなことから真が手に入れた、城の絵。緻密なデッサンで描かれたその絵は、夜になると「絵の向こう側」が現実のように動き出す。ふと思いついた真は、絵のなかに人間の姿を書き足して指を重ねてみると、意識が吸い込まれるように絵の中に移ることを知った。だがしかし、完全な人間として絵の中に入るには、完全な人間をそこに描かなければならない。さもなくば関節が十分に動かなかったりなどの支障が出る。彼の絵の才能ではかなりハードルが高い。
そこで考えたのは、城田珠美のことである。学年きっての変わり者で、ハブられている女生徒だが、絵の才能はかなりのもの。考えてみれば、この絵のタッチは、彼女が描いたものかもしれない。なんとか接触をもとうとストーキングをはじめた真は、ある公園でスケッチをはじめた珠美に、ついに話しかけた。

上野ブラディメアリ / 恩田陸

シリーズ「失われた地図」 第三回
鮎観、遼平、浩平と、裂け目を予想する役目の小柄な男で風雅一族の重鎮「煙草屋」の四人は、花見をしていた。

つくもがみ遊んでください / 畠中恵

第一回
損料屋出雲屋には、器物年経りて人語を話すようになったつくもがみがたくさんいる。それを知っているのは主人夫婦と、もう一グループ。子供たちだ。出雲屋の十夜、小物問屋すおう屋の市助、料理屋鶴屋のこゆり、三人のおさななじみ。もとはといえば、子供らが道具を乱暴に扱ったことが原因。道具に興味をもつのは子供らしさ、そして不用意に扱うのも、また子供らしさである。ぞんざいな扱いに耐えかねたつくもがみたちは、ふだん人間がいるところでは話をしたりしないのに、つい言葉を発してしまったのだ。
ところが最近、子供が大嫌いなつくもがみが出雲屋に加わった。双六のそう六だ。双六という道具の性質上、いつ子供らに破られるかとひやひやしていたそう六は、つくもがみとして成立して以来、子供を憎むことはなはだしい。そう六は十夜たちに、二度と器物で遊ばないよう、双六勝負を仕掛けた。

もどき開口 -木島日記 完結編- / 大塚英志

第十回
瀬条機関の大脳クラウドは木島たちにメッセージを伝える。
木島となった春洋は、美蘭と交わりながら生と死を仕分けする。
肉体をほぼ復活させた大杉だが、足萎えはこのままであるようだ。

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今号から新連載が2本。掲載順が作家の格順のような気がするのは気のせいですかそうですか。

『文明怪化奇談』
放射線障害を扱うとは、ホットですな。

『虚実妖怪百物語』
まだ異変を羅列している段階。この展開スピードだと大長編になりそうだが。楽屋落ち小説なのに。

『過ぎ去りし王国の城』
宮部のファンタジーはすべて未読だが、軒並み評判よろしくない。ショタ趣味が強すぎるという意見も。自分の目で確かめる機会が来た。

『上野ブラディメアリ』
導入部のみ。原稿落としてたりしてな。

『つくもがみ遊んでください』
『つくもがみ貸します』の続編。主人夫婦!しかも子供が!…このあたり、どういう展開だったんだろうか。

『もどき開口』
どこからが幻覚かと考える自体無駄だと思いつつも、やはり読みにくい。毎度ながら。