uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

ローウェル城の密室 / 小森健太郎

ローウェル城の密室 (ハルキ文庫)

ローウェル城の密室 (ハルキ文庫)

妖しい森に迷い込んだ中学生の恵と保理。そこに住む老人に呼び寄せられたのだ。老人は二次元生物と、それらが生きている擬三次元的二次元世界の研究をしている。つまり少女マンガのことだ。ふたりは老人によって少女マンガ『ローウェル城の密室』に送り込まれた。

恵はメグ・マーシャル。靴屋でこきつかわれている貧しい娘だが、レイク王子に見初められる。保理はホーリー・ローウェル。レイク王子の弟。
ローウェル城には、あるしきたりがある。次期国王夫妻となるものは、城内にある〈北の塔〉と〈南の塔〉に分かれ、七日七晩をそこで過ごさねばならない。その間塔は完全な密室となるのだ。
花嫁が決まり、儀式が行われた最終日。塔の中で残虐な密室殺人事件が発生する。


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やりやがった笑 ひどいひどいと聞いてはいたが、本当にひどい笑

このトリックを知ったとき、人のとる行動はだいた四種類に分かれると思う。一、その場に崩れ折れる。二、爆笑する。三、感心する。四、本を壁に投げる。自分の場合まず一が来て、それから三に変化した。正しい。まったくもって正しいトリックだ。論理的な破綻はなく、材料はずべて明示され、しかもヒントさえ与えられている。すばらしくフェアであると言えるだろう。超絶的にくだらないことを除けば笑

ラストですべて持っていかれた感があるが、経過もなかなかおもしろい。中世的ファンタジー世界を舞台にした嫁選びストーリーなのだが、すべてがどことなく調子っぱずれ。あえてマンガ的に描いたのだろうと思われるが、十六歳のときに書いた同人作品だというのも影響しているかも。自由に書いているぶん遊び心や悪ふざけが入ってくるだろう。書き直してはいるが、骨子は同じだそうなので。唐突に密室談義が入ってくるあたりは笑った。

まあでも、何がすごいといって、これを最終選考まで残した乱歩賞の審査員がすごいと思う。
老害ばかりの某賞とは違うねえ。