- 作者: アイザックアシモフ,Isaac Asimov,東理夫
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/12
- メディア: 文庫
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スープ
チキン・スープ・キッド / R.L.スティーヴンス
ギャンブルにはまり多額の借金を背負ったスポーツ記者。懇意の本命ジョッキーに薬を飲ませ、番狂わせを起こすたくらみに加担させられる。
前菜
茸のシチュー事件 / ルース・レンデル
ミセス・ハナ・キングマンが飛び降り自殺した事件。だがこれには、他殺の疑いがあった。なぜならその二週間前、ハナは毒殺されかけたのだ。
夫のアクセル・キングマンは自然食品店を営む禁酒主義者の男。かつて情熱的で才能あふれる美女コリーン・ラストと暮らしていたが、彼女を捨ててごく平凡なハナと結婚した。それ以降もコリーンとキングマン夫妻はともだち付き合いを続けている。もうひとりの登場人物はハナの弟ジョン・フッド。コリーンにぞっこんで、姉を慕っており、キングマンを毛嫌いしている。
この四人がそろってコリーンの庭でとれた茸のシチューを食したあと、ハナだけが体調を崩したのだ。毒物を盛られたかのように。
第一のコース
野菜
凶悪な庭 / キャロル・カイル
菜食主義者の老女。だがこのところ、自分の畑が怖くなって食料をとりに行くことができない。ついに食料が尽きたとき、都会の大学に通う孫娘が思いがけず訪ねてくる。
メインコース
特別料理 / スタンリー・エリン
絶品料理を出す料理店。メニューはなく、誰もがその日提供される料理を食べなければならない。不定期に供される「特別料理」は、それはもう筆舌に尽くしがたい味わいである。
おとなしい凶器 / ロアルド・ダール
愛する夫の子をみごもり、帰りを待つ女。だがその幸せは根底からくつがえった。帰宅した夫が、いきなり別れを切り出したのだ。混乱した女は、カチカチに凍ったラム肉で夫を撲殺する。
香辛料
追われずとも / アイザック・アシモフ
オールジャンルであらゆるものを書くという物書き。書いたものが一度も売れなかったことはないと豪語するが、ただ一度だけ、原稿を買った編集者がそれを掲載しようとしない事例があった。
記事の注文は「形式主義的行為について」。依頼を受けた晩餐会での一風景を切り取って皮肉を効かせたものだが…
二本の調味料壜 / ダンセイニ卿
ある香辛料商人が一時期ルームシェアした名探偵の推理譚。
ある男が、二百ポンドを所持した少女とバンガローで五日間を過ごした。少女の金をすべて巻き上げ、金が尽きたのが五日めということだ。その後少女の姿を見た者はいない。疑いを持ったスコットランドヤードが男の周辺をくまなく捜索するが、少女の死体は出てこない。
飲み物
デザート
幸せな結婚へのレシピ / ネドラー・タイアー
骨折してベッドに伏せている女に、雑誌記者が取材にくる。テーマは「幸せな結婚へのレシピ」。何人もの男と、死別し、また出会い、結婚し、財産を受け継いできた彼女への質問をたずさえて。
死の卵 / ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリング
非番なのに駆り出された、アムステルダム市警殺人課のデ・ヒーア部長刑事とフレイプストラ警部。最初に向かったのは首吊り自殺した老人の現場。その後また無線が入り、毒殺されかけた弁護士夫人の家に向かう。玄関先に置いてあった、イースターのチョコ卵の中に農薬が混入されていたという。
ノルウェイ林檎の謎 / ジェイムズ・ホールディング
豪華客船で、若く魅力的な女性がリンゴを喉につまらせて死亡した。乗り合わせた作家コンビ、リロイ・キングの二人組は、もしこれが他殺だったら…と思考実験をはじめる。
ナッツ類
ギデオンと焼栗売り / J.J.マリック
ベン爺さんの燒栗屋台が若者の集団に襲われ、燒栗をすべて奪われた。いつも燒栗を買っていたギデオンは話を聞いて憤慨し、ケガをした爺さんを見舞う。
食後の腹ごなし
いつもの苦役 / ビル・ブロンジーニ
ちょっとした仕事で懐があたたかくなったチンピラ、ミッチェル。いつものギフトホルツの店で一杯ひっかける。貧弱で馬鹿正直で貧乏ったらしい老人の店だが、うまい食い物を出すのだ。
飼犬へのお土産
ドッグスボディ / フランシス.M.ネヴィンズJR.
詐欺師マイロ・ターナーは、ある大学に架空の警備システムを売り込みに来ていた。学長の義弟でガンマニアの警察署長に気に入られ、事件の解決に協力することになる。犬連続毒殺事件である。
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食に関する短編を集めたアンソロジー。アシモフ編。ギデオン警視やネロ・ウルフなどの有名どころも登場。
食というと、だいたい二つのネタがぱっと思いつく。ひとつは毒、もうひとつは… まあだいたいそんなようなお話になっております。
いちばんおもしろかったのは何かと聞かれれば、やっぱり『二本の調味料壜』かなあ。再読。落ちははじめから想像つくんだけど、なぜ薪を大量に作っていたのか?という謎の回答には、やっぱり感心する。ラスト一行で読者に強烈な印象を残す、すごい作品。
別の意味でおもしろかったのが『ノルウェイ林檎の謎』。題名からしてパロディ。主人公はペンネーム『リロイ・キング』の二人組推理小説作家。まあクイーンですわ。
短篇らしくコンパクトかつひねりを効かせたものが多く、まあまあ楽しめた。黒後家蜘蛛もあるよ!