uruya’s diary

夏山登山とツーリング。冬は鉄分多め。

虚言少年 / 京極夏彦

虚言少年

虚言少年

僕の名前は内本健吾、小学六年生。間違っても主役にはなれない、モテないグループのその他大勢。で、まあ嘘つきである。怪獣好きで、のちにオタクと呼ばれる人種だろうが、まだその言葉はない。昭和も古い時期だからだ。ライダーカードとかその辺の時代。下ネタ大好きのホマレ─矢島誉、学校では習わない知識が豊富なキョーノ─京野達彦とトリオを組んでいつも三人いっしょにいる。

ソノ一・三万メートル

その日もホマレと登校し学校へつくと、女子がひとり泣いていて、まわりをみんなが囲んで深刻な雰囲気になっていた。

ソノ二・たった一票

モテないしめだたないが、オモシロイことを探す嗅覚に長けた三人組。いつものようにトリオで登校するが、その日は生徒会長候補をクラスから選出する日だった。

ソノ三・月にほえろ

クラスのお楽しみ会の出し物である。だいたい三つか四つで、歌舞音曲のたぐいと演劇がお決まりとなっているのだが、今回演劇の内容が決定していない。そこでプロデュース役をおおせつかった、というか押し付けられたのが、僕ケンゴだった。修学旅行で失踪事件を起こし、弱みを握られていたせいである。なんとか演目をでっちあげなばならない。

ソノ四・団結よせ

運動会といえば一大イベントであるが、こどもの世界では大きく三派にわかれる。大好き派と大嫌い派、そして大多数のどうでもいい派だ。
わがクラスには鼻息の荒い奴がひとりいる。クラスの次期リーダーをめざしているらしいハギモトが、一致団結セヨなどと言い出したのだ。

ソノ五・けんぽう

ホマレが言い出した、三人の秘密結社。そこへ木林慎太郎が加入したいということになった。
ホマレがシンタロウに秘密結社のことを明かしたのは、世に言うけんぽう事件がきっかけであった。

ソノ六・ひょっこりさん

小学生のあいだで爆発的に流行した、こっくりさん。オカルト風味の占いであるが、まあ人為的な作用によるものだ。
担任によって禁止令が出されたのだが、そのあとになって、こっくりさんを召還することに。遺憾なことに僕ケンゴは、儀式の中心的役割をはたさなければならなかった。

ソノ七・屁の大事件

屁は凄い。生理現象でありながら、小学生にとって無限の笑いを秘めている。今回はその、屁にまつわる事件である。
主要登場人物は三名。おならくんというあだ名の転校生、成田くん。授業中の放屁を持ちネタにしているハギモト。そして最後に、河下くん。その日河下くんは体調がすぐれないらしく、青い顔をして終始うつむいていた。

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ほぼ連載で読んだので書き下ろしと取りこぼしのみチェック。

昭和三十年代後半を舞台にした、小学生が主人公のお笑い小説。語り手が小学生といっても、子供っぽい文体ではない。大人顔負けに理屈っぽい文章だ。真顔でくだらないことを言う京極夏彦らしい芸風。

キョーノはまんま京極夏彦がモデル。ほとんどの登場人物にモデルが存在していることで知られる京極のことだから、ケンゴやホマレにも実在の人物が存在するのだろう。もしかすると各話とも、本当にあった事件が下じきになっているのかもしれない。

基本的にはボンクラ小学生のお馬鹿な日常を描いたお話だが、この三人、笑いのツボがヒネている。傍観者として世間をおもしろがろうとする姿勢は、およそ小学生らしくない。京極夏彦の子供時代は、こんな可愛げのないガキだったんじゃなかろうか笑